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風月無尽の無何有の郷

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2013/10/1 松風亭 雅山

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秋めいて参りました。


仲秋の名月と満月は、1〜2晩ずれる事が多いようですが、2011年、2012年に加え、今年も同じ晩だったようです。 また、二十四節気の秋分、七十二候の第46候(秋分の初候)『雷声を収む』の日に、雷鳴が聞こえることもあります。


さて、本題で御座いますが、紫式部が石山寺に参籠して琵琶湖の湖上に浮かぶ(寺と湖の位置関係からは、湖上に映る)月を見て、


今宵は十五夜なりけりと思し出でて、殿上の御遊び恋しく・・・


と、源氏物語の着想を得た(須磨、明石の巻から書き出しました)話等、日本では月に纏わる浪漫は尽きませんが、 七夕関連以外では、星を歌った歌は少ないです。


その中でも建礼門院右京大夫の星の夜の次の歌が好きです。


月をこそ ながめなれしか 星の夜の ふかきあはれを こよひしりぬる


源平の合戦で、恋人平資盛(重盛の次男)を失った(壇ノ浦の急流に身を投じて、・・・25か28歳で)傷心による 心境の変化から星の浪漫に気付いた云々と大昔にどこかの本に書いてあったのを微かに記憶しております。


そこでは、星を歌った歌が少ないのは、ヨーロッパや中国のように、星を眺められる広大な地形がないからか?と地理起因的な事が書いてあったような?、・・・


星に対する日本人の感性に対し、折口学を継承する西村 亨 先生が、次のような趣旨の事を著しておられます。


・・・古代の日本人は星に対してあまりいい印象をもっていない。螢の光が遠い古代には精霊たちの乱舞する様と感じられていた ・・・星の光も螢火と相通じるものであったらしい。・・・


また、七夕は、唐風の影響を受けたハイカラ的な流行から始まったと言っておられます。

奈良朝の中頃に宮廷に取り入れられ、平安朝になってから年中行事に固定と。


逆に、ヨーロッパでは、月は、人の心をかき乱し、狂わせるものというイメージがあります、・・・月の女神は死を暗示し、満月の狼男等、・・・

狼男の話は、バルト・スラヴ系民族の古い風習との関連、魔女審判との関係等、多くの深い謎と闇と、・・・いろいろありそうですが、・・・月と星に纏わります浪漫は尽きません。


拙い句ですが、月に戻ります。

洞庭湖を思って、言葉を並べてみました。


洞庭看明月   洞庭に明月を看る

秋宵麗誘人   秋宵麗しく、貴人を誘い
洞庭銀波香   洞庭には、銀波香し
浮舟漂湖上   舟を浮かべ、湖上を漂い
挙杯映明月   杯を挙げて、明月を映す


締めは、倭での月下の鍛錬で御座います。


深山に 修する剣は 時空衝き 村雨上がり 月に群雲


リーディング・エッジTOPSコアの切っ先鋭いイメージで御座いましょうか。




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