スペシャルコンテンツ >> 顧問コラム >> 『風月無尽の無何有の郷(松風亭 雅山)』


風月無尽の無何有の郷

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2017/8/1 松風亭 雅山

<<< 蝉の声 >>>


今年も、夏の盛りと相成りました。


幼少期は、大木の多く茂った庭に面した2階の南の部屋で寝起きしておりましたが、夏の盛りは、元気で賑やかな蝉の大合唱で、心地よく目が覚めたものです。

真夏の真っ青な空と白くぽっかりと浮かんだ雲の天然色の映像とともに、今でも、鮮明に想い起こされます。


    やがて死ぬけしきは見えず蝉の声


芭蕉の句ですが、無常観とともに、今を精一杯生き抜く本能の気高き叫びのようなものを感ぜずにはいられません


とかく先のことを憂慮し過ぎて、腰の定まらないことも多い現代人にとって、誠に新鮮なことであります。


蝉に肖りまして、未来を案じることなく、今を思い切り走り抜けたく思います。


伊豆の海を見晴るかす高台の高層階の部屋で、tristesse allante 滾るモーツァルトを流して群青の海をぼんやりと眺めながら、そんな事を時々考えております。


一日一生、佳き意味での刹那主義かと存じ上げます。




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