スペシャルコンテンツ >> 顧問コラム >> 『風月無尽の無何有の郷(松風亭 雅山)』


風月無尽の無何有の郷

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2014/10/1 松風亭 雅山

<<< 鹿に紅葉、時雨、・・・ >>>


今月は、全国各地の八百万の神々が出雲へ出掛けるので、神無月、逆に、出雲では、神々が集まるので、神有月と言われるそうですが、山海の旬の美味が一層益して引き立つ季節です。

酒党には、最高の季節の一つで御座います。


さて、紅葉に鹿という取り合わせは、日本の文学・美術等において、基本的な取り合わせですが、

奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき


など思い浮かびます。


古今集 秋上 読人知らずの歌ですが、藤原定家の撰した小倉百人一首では、三十六歌仙の一人で、 伝説上の人物で実在がはっきりしない猿丸太夫の作とされておりまして、興をそそります。

柿本人麻呂との同一人物説なども、梅原 猛 先生が唱えております。


歌枕でも有名な能因法師の

嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり


なども口ずさみやすいこの季節の歌ですが

竜田川と言えば、業平の歌の方が、より人口に膾炙しているでしょうか、・・・


ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは


また、陰暦十月としての神無月の季節感を代表するものが時雨と古(いにしえ)より言われております。

折口学を継承する西村 亨 先生 ”(丁度1年前の2013年10月にも西村 亨 先生にふれました)” は、じぐれに「時雨」と当てるのは、ほととぎすの「時鳥」と同じく、季節の訪れを告げる景物であることを示しているのであろうという趣旨のことを著されております。


『能因歌枕』にも、十月の雨をば、しぐれといふ


とあります。


降り敷く時雨に濡れかすむ紅葉や楓の落葉、・・・日本の美、風情です、・・・

日本の美、風情を堪能しながら、一献で御座いましょうか。


最後に、駄作を一つ


小鹿鳴く 奥山寂し 秋の暮れ 今宵も一人 もの想う君



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