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風月無尽の無何有の郷

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2014/7/1 松風亭 雅山

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薪能は、本来は夏の催しと思われますが、駄作を一つ


春の宵 篝火香る 薪能 夢幻の果てに 誘う調べ、


昔から強く惹かれています世阿弥に対しましても、小林秀雄氏の筆致は冴え渡っております。


『・・・室町時代という、現世の無常と信仰の永遠とを聊かも疑わなかったあの健全な時代を、史家は乱世と呼んで安心している。

・・・そして又、僕は、無用な諸観念の跳梁しないそうゆう時代に、世阿弥が美というものをどういう風に考えたかを思い、其処に何の疑わしいものがない事を確かめた。

「物数を極めて、工夫を尽して後、花の失せぬところを知るべし」美しい「花」がある、「花」の美しさという様なものはない。

彼の「花」の観念の曖昧さに就いて頭を悩ます現代の美学者の方が、化かされているに過ぎない。

・・・不安定な観念の動きを直ぐ模倣する顔の表情の様なやくざなものは、お面で隠して了うがよい。

彼がもし今日生きていたなら、そう言いたいかも知れぬ。』

室町時代云々の件(くだり)は、 ”以前(2013年5月など)” にもふれました神と人間の距離のテーマにも一脈通ずるところがあるかと存じます。



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