スペシャルコンテンツ >> 顧問コラム >> 『風月無尽の無何有の郷(松風亭 雅山)』


風月無尽の無何有の郷

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2014/4/1 松風亭 雅山

<<<道元の春は花、・・・>>>


春は花 夏ほととぎす(ほとゝぎす) 秋は月 冬雪冴えて(消えで) 冷しかりけり


道元禅師の作品(和歌集:傘松道詠)ですが、禅師は、今年で、生誕814年かと思います。

確か、(異説もあるようですが)関白 藤原(松殿)基房の娘で、絶世の美女と言われた藤原(松殿)伊子(従三位)を御生母として、正治2年(1200年)正月2日のお生まれです。

生誕地は、(同様に、異説もあるようですが)宇治木幡の松殿山荘とのことです。


詞書にも、本来の面目を詠ずとあり、本来の面目を歌ったものとされておりますが、冷しかりけりの句について

「すずしい」の意味を、「物のさまがさわやかである」、特に、「心がさわやかである、わずらいがない」と捉えれば、深い意味が出ると言われておりますが、

正にその通りで、心自体が、この美しい四季の移りの折り折りの美、おりふしの風情のように「すずしく」ありたいものです。


この歌は、川端康成がノーベル文学賞受賞記念講演(演題:美しい日本の私 その序説)の中で、冒頭に取り上げたものですが、

正に、クールチップ、クールソフトにも通じます趣で御座いましょうか。


この歌に続きまして、明恵上人の夜半から暁までの「冬の月」の三首が続きます。


雲を出でて 我にともなふ 冬の月 風や身にしむ 雪や冷たき


山の端に われも入りなむ 月も入れ 夜な夜なごとに また友とせむ


隈もなく 澄める心の 輝けば 我が光とや 月思ふらむ


正に、「雪月花の時、最も友をおもふ」の境地で御座いましょうか。


風月無尽を堪能したいもので御座います。

また、最後に、駄作を一つ、・・・心地佳き春の宵を想って、言葉を並べてみました。


春宵朧月宴   春宵、朧月の宴


月朧春霞煙   月は朧に、春、霞に煙る

香杯浮桃花   香る杯、桃花を浮かぶ

欲吟妃携燭   吟ぜんと欲すれば、妃は燭を携え

欲舞妓奏琴   舞わんと欲すれば、妓は琴を奏でん




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